50年ローンはやめとけ!その理由とは?金利上昇・老後・住宅価値の落とし穴

最近、住宅ローンの返済期間が50年という商品を見かけるようになりました。

35年ローンでも十分長いと思っていたのに、今度は50年です。

住宅価格が高騰するなか、毎月の返済額を抑えられるのは確かに魅力的。でも、ちょっと考えてみてください。

30歳で50年ローンを組んだら、完済するのは80歳です。

その間、金利はどうなるのでしょうか。今と同じ収入を維持できるのでしょうか。そして、購入した住宅には50年後、どれくらいの価値が残っているのでしょうか。

今回は、50年ローンのメリットも認めつつ、見落としがちなリスクを考えてみたいと思います。

50年ローンを扱う銀行が増えている

住宅金融支援機構が2026年3月に公表した「2025年度住宅ローン貸出動向調査」によると、最長返済期間が50年の変動金利型住宅ローンを取り扱う金融機関の割合は、2024年度の33.8%から2025年度には57.5%に増えました。

固定期間選択型でも33.6%から55.2%に増加しています。

つまり、50年ローンは一部の特殊な商品ではなく、銀行が積極的に提供する選択肢になりつつあるということです。

ただし、この数字は50年ローンを提供する金融機関の割合であり、実際に50年間のローンを組んだ人の割合ではありません。

背景には住宅価格の高騰があります。

住宅が高くなれば、同じ35年ローンでは毎月の返済額が大きくなります。そこで返済期間を延ばせば、月々の負担を抑えられるというわけです。

でも、返済期間を延ばしたからといって、住宅そのものが安くなるわけではありません。

理由① 金利が上がったらどうする?

私が最も気になるのは金利上昇です。

50年という長い期間、今の金利がずっと続くとは限りません。

例えば、4,000万円を50年ローンで借りた場合、金利によって毎月の返済額は次のように変わります。

金利 毎月の返済額 総利息
年1.0% 約8.5万円 約1,085万円
年1.5% 約9.5万円 約1,688万円
年2.0% 約10.6万円 約2,331万円
年3.0% 約12.9万円 約3,727万円
年4.0% 約15.4万円 約5,257万円

※借入額4,000万円、元利均等返済、ボーナス返済なし。各金利が借入当初から50年間変わらなかったと仮定した比較です。途中で変動金利が上がった場合の返済額を直接示すものではありません。

年1%と年3%では、毎月の返済額に約4.4万円もの差が出ます。

さらに、総利息の差は約2,642万円です。

もちろん、将来必ず金利が3%になるという話ではありません。

ただ、50年という長い期間の返済計画を、現在の低金利だけを前提に立ててしまうのは怖いと思います。

5年ルール・125%ルールがあれば安心?

変動金利の住宅ローンには、金利が上がっても毎月の返済額がすぐには増えない仕組みを採用している商品があります。

代表的なのが「5年ルール」と「125%ルール」です。

5年ルールは、金利が変わっても原則として5年間は毎月の返済額を据え置く仕組み。

125%ルールは、返済額を見直す際、従来の125%を超えないようにする仕組みです。

一見すると安心できそうですが、ここには落とし穴があります。

返済額が据え置かれても、金利が上がれば返済額に占める利息の割合が増え、元金の減り方が遅くなります。

条件によっては未払利息が発生したり、最終返済時に残額の一括返済が必要になったりする場合もあります。

しかも、すべての住宅ローンにこれらのルールがあるわけではありません。

毎月の返済額が変わらないことと、金利上昇の影響を受けないことは別なのです。

理由② 35年ローンより元金が減りにくい

50年ローンのもう一つの問題は、元金の減り方が遅いことです。

4,000万円を年1.5%で借りた場合を比較してみます。

比較項目 35年ローン 50年ローン
毎月の返済額 約12.2万円 約9.5万円
総利息 約1,144万円 約1,688万円
10年後のローン残高 約3,062万円 約3,420万円

※金利が全期間1.5%で一定の場合の試算。諸費用や金利上乗せは含みません。

50年ローンなら毎月約2.8万円安くなります。

しかし、10年間返済しても、35年ローンより約358万円多く借金が残る計算です。

これは、将来家を売ることになったときに大きな問題になります。

理由③ 家を売りたくても売れない可能性

住宅を購入したときは、一生住むつもりかもしれません。

でも、50年もあれば人生にはいろいろなことが起こります。

転職、転勤、離婚、親の介護、収入の減少。子どもが独立して、広い家が必要なくなるかもしれません。

そんなとき、住宅を売却して住み替えようと思っても、住宅の売却価格よりローン残高が多ければ、売却代金だけでは借金を返しきれません。

例えば、ローンが3,400万円残っているのに、家が3,000万円でしか売れなかったらどうでしょう。

売却費用を考慮する前でも、400万円不足します。

不足分を別の資金で補えなければ、通常の売却が難しくなる可能性があります。

もちろん、住宅価格が上昇する地域もあります。

ただし、人口減少が進む地域や、築年数が古くなった住宅では、将来の売却価格を慎重に考える必要があります。

家を買えることと、将来その家を売れることは別の話です。

理由④ 定年後も住宅ローンが続く

30歳で50年ローンを組んだら、完済するのは80歳です。

仮に65歳で仕事を辞めたとすると、その後15年間も返済が続きます。

年金生活になってからも、毎月の住宅ローンを払い続けられるでしょうか。

しかも老後は住宅ローンだけではありません。

生活費、医療費、介護費なども必要です。

退職金で繰上返済すればいいという考え方もありますが、退職金を住宅ローンの返済に使ってしまうと、その分だけ老後資金が減ります。

そもそも50年後まで、現在と同じ年金制度や働き方、収入環境が続くとも限りません。

金融機関には完済時年齢などの条件があるため、実際に借りられる期間は人によって異なります。それでも、定年後の返済をどうするのかは、契約前に考えておきたい問題です。

理由⑤ 家は50年間、修繕なしでは住めない

住宅ローンの返済だけを考えていると、見落としがちなのが修繕費です。

家は購入した瞬間から少しずつ古くなっていきます。

給湯器やエアコンなどの設備は交換が必要になりますし、戸建てなら屋根や外壁の修繕も考えなければなりません。

マンションの場合は、管理費や修繕積立金の負担があります。建物の老朽化に伴い、修繕積立金が増額される可能性もあります。

50年ローンの場合、住宅が築30年、築40年になっても返済が続いていることがあります。

つまり、住宅ローンと大きな修繕費が同時に家計を圧迫する可能性があるわけです。

「毎月のローン返済額が安いから大丈夫」と考えるのではなく、住宅を維持する費用も含めて判断する必要があります。

理由⑥ 病気や失業、働き方の変化に対応できる?

50年という期間は、仕事の面でも非常に長い時間です。

今は安定した収入があっても、10年後、20年後はどうなっているでしょうか。

会社の業績悪化、転職、独立、病気などで収入が減ることも考えられます。

さらに、AIの進歩によって、今後の仕事の内容や働き方が大きく変わる可能性もあります。

これは必ずしも悪い変化とは限りませんが、今の年収が50年間続くことを前提にするのは難しいと思います。

団体信用生命保険があっても、失業やあらゆる病気を保障してくれるわけではありません。保障内容は契約によって異なります。

住宅ローンを返すために、転職や独立といった新しい挑戦を諦めることになったら、少し残念な気もします。

理由⑦ 災害で家を失ってもローンは残る

日本で住宅を購入するなら、地震や台風、水害などの自然災害も無視できません。

仮に大きな地震で住宅が全壊しても、原則として住宅ローンの返済義務が自動的になくなるわけではありません。

火災保険や地震保険で損害を補える場合もありますが、保険金が住宅ローンの残高をすべてカバーするとは限りません。

場合によっては、住めなくなった住宅のローンを払いながら、新しい住まいの費用も負担することになります。

もちろん、これは35年ローンでも起こり得る問題です。

ただ、返済期間が長くなれば、それだけ長期間にわたって住宅と借金を抱えることになります。

理由⑧ 住宅ローンがあることで人生の自由度が下がる

これは数字に表れにくいリスクかもしれません。

住宅ローンは、毎月必ず返済しなければならない固定費です。

50年間返済が続くということは、その間ずっと住宅ローンを意識した生活になるということでもあります。

仕事を辞めて少し休みたい。

収入は減っても、やりたい仕事に挑戦したい。

地方に移住したい。

そんなときに、住宅ローンが大きな制約になるかもしれません。

もちろん持ち家には安心感がありますし、賃貸でも家賃は必要です。

それでも、長期間の借金を抱えることが、人生の選択肢にどのような影響を与えるかは考えておきたいところです。

50年ローンにもメリットはある

ここまでリスクを挙げてきましたが、50年ローンがすべての人に向いていないというわけではありません。

最大のメリットは、毎月の返済額を抑えられることです。

例えば、先ほどの4,000万円・年1.5%の試算なら、35年ローンと50年ローンでは毎月約2.8万円の差があります。

この差額を貯蓄や教育費に回せば、家計に余裕が生まれるかもしれません。

また、余裕資金をNISAなどで長期投資する考え方もあります。

住宅ローンの金利より高い利回りで運用できれば、結果として資産形成に有利になる可能性があります。

ただし、投資には元本割れのリスクがあります。

さらに、公平に比較するなら、35年ローンを完済した人が、その後の15年間に返済不要となったお金を貯蓄・投資できることも考慮する必要があります。

50年ローンで浮いたお金を投資すれば必ず得になる、というわけではありません。

また、50年ローンには35年超の借入に金利が上乗せされる商品もあるため、実際の契約条件で比較することが重要です。

一番怖いのは、50年ローンによって借りすぎてしまうこと

私が一番気になるのは、ここです。

本来、35年ローンでは毎月の返済が厳しい住宅でも、50年に延ばせば月々の返済額を抑えられます。

すると、これまで買えなかった価格帯の住宅にも手が届くようになります。

でも、それは本当に住宅が買いやすくなったということなのでしょうか。

単に、将来の収入をより長い期間にわたって返済に充てることにしただけとも考えられます。

しかも、多くの人が長期ローンによって高い住宅を買えるようになれば、住宅価格をさらに押し上げる要因になる可能性もあります。

もちろん、住宅価格は土地の供給、建築費、人口動態、金利など、さまざまな要因で決まります。50年ローンが住宅価格を押し上げていると断定できるわけではありません。

それでも、住宅価格の高騰を返済期間の長期化で乗り切ろうとする流れには、少し違和感があります。

金利上昇・収入減少・住宅価格下落が同時に起きたら?

ここまで紹介したリスクは、それぞれ単独で起こるとは限りません。

例えば、変動金利が上昇して返済負担が増えたところに、勤務先の業績悪化で収入が減少する。

家計が苦しくなり、自宅を売ろうとしたら住宅価格も下がっていた。

ところが、50年ローンなので元金があまり減っておらず、売却価格よりローン残高の方が多い。

こんな状況になれば、住み続けるのも、売却するのも難しくなるかもしれません。

これはあくまで想定されるシナリオであり、必ず起こるわけではありません。

しかし、50年という長い期間には、さまざまなリスクが重なる可能性があります。

だからこそ、現在の返済額だけで判断するのは危険だと思います。

50年ローンを選ぶ前に確認したいこと

50年ローンを検討するなら、少なくとも次の点は確認しておきたいところです。

  • 金利が2%、3%、4%になっても家計は耐えられるか
  • 定年後の返済資金をどう確保するか
  • 10年後、20年後に売却してもローンを返済できそうか
  • 住宅の修繕費や管理費を含めても無理がないか
  • 収入が減っても一定期間は返済できる貯蓄があるか
  • 35年ローンと比べて総支払額がどれだけ増えるか
  • 浮いたお金を使い切らず、貯蓄や投資に回せるか

特に大切なのは、銀行が貸してくれる金額と、自分が無理なく返せる金額は違うということです。

まとめ|50年ローンは将来の自分への先送り?

50年ローンには、毎月の返済額を抑えられるという大きなメリットがあります。

収入に余裕があり、十分な貯蓄を確保しながら、計画的に利用するなら合理的な選択になる場合もあるでしょう。

ただし、50年という長さを甘く考えるのは危険です。

金利が上がるかもしれない。

収入が減るかもしれない。

家の価値が下がるかもしれない。

そして、家は古くなり、自分も年を取っていきます。

個人的には、住宅価格が高くなりすぎた問題を、返済期間を延ばすことで解決しようとしているようにも感じます。

35年ローンでも長いと思っていたのに、今度は50年。

毎月の返済額を安くするために、将来の自分に負担を先送りしているだけではないのでしょうか。

50年ローン、あなたはアリだと思いますか?


※この記事の返済額・総利息・残高は説明用の試算です。実際の金利、諸費用、返済方法、金利変更ルールなどによって結果は異なります。

SNSでもご購読できます。