相続税は30年前より高くなった?物価は上がったのに基礎控除は40%減!1996年と2026年を比較してみた

最近、有名人の遺産相続をめぐって、相続税が高すぎるという話をSNSなどで見かけるようになりました。

日本の相続税の最高税率は55%。かなり高い数字ですよね。

ただし、誰でも遺産の55%を税金として取られるわけではありません。相続する財産の金額や家族構成によって税負担は変わります。

それよりも個人的に気になったのが、相続税の仕組みが昔と比べてどう変わっているのかということです。

最近は食料品も日用品も値上がりしていますし、不動産価格の上昇もよくニュースになります。

そこで、約30年前の1996年と現在の2026年を比較してみました。

調べてみると、ちょっと驚く結果でした。

30年前と現在で、相続税の基礎控除は40%も減っていた

相続税には「基礎控除」という仕組みがあります。

簡単にいうと、相続した財産から一定額を差し引いて税金を計算する仕組みです。正味の遺産総額が基礎控除以下なら、原則として相続税はかかりません。

1996年と2026年の基礎控除を比較すると、次のようになります。

項目 1996年 2026年
定額部分 5,000万円 3,000万円
法定相続人1人あたり 1,000万円 600万円
子ども1人の場合 6,000万円 3,600万円
子ども2人の場合 7,000万円 4,200万円
配偶者と子ども2人の場合 8,000万円 4,800万円

なんと、基礎控除は30年前より40%も少なくなっています。

例えば、配偶者がおらず、子ども2人が財産を相続する場合。

1996年なら7,000万円まで基礎控除の範囲内でしたが、現在は4,200万円までです。

この差は2,800万円。

同じ金額の財産を残しても、昔なら相続税がかからなかったのに、今なら課税対象になるケースがあるわけです。

※出典:財務省「相続税の改正に関する資料」

なぜ相続税の基礎控除は減ったのか?

実は、30年間かけて少しずつ減ったわけではありません。

大きく変わったのは2015年1月です。

それ以前は、1994年の改正で設定された「5,000万円+1,000万円×法定相続人の数」という基礎控除が長く続いていました。

その背景には、バブル期の土地価格の高騰があります。

当時は土地の評価額が大きく上昇したため、一般家庭まで相続税の対象になることを抑える目的で、基礎控除が引き上げられてきました。

しかし、バブル崩壊後は土地価格が下落。

政府は、相続税を負担する人が少なくなり、資産格差を是正する機能が弱まったとして、2015年に基礎控除を40%引き下げました。

つまり、基礎控除が下がったことには理由があったわけです。

ただ、そこから10年以上が経過し、今度は物価や一部地域の不動産価格が上昇しています。

それでも基礎控除は2015年から変わっていません。

ここが少し気になるところです。

物価は30年前からどれくらい上がった?

総務省の消費者物価指数を確認すると、1996年の指数は96.0、2025年度は112.3です(2020年=100)。

比較すると、物価は約17%上昇した計算になります。

もちろん、日本は長い間デフレが続いていたので、30年間ずっと物価が上昇していたわけではありません。

特に2022年以降の物価上昇が大きく影響しています。

ここで相続税の基礎控除と比較してみます。

  • 1996年から2025年度までの物価上昇:約17%
  • 1996年から2026年までの基礎控除の変化:40%減少

物価が上がっているのに、税金がかからない財産の上限は大幅に下がっているわけです。

仮に1996年の基礎控除7,000万円を物価上昇に合わせて調整すると、現在は約8,190万円に相当します。

しかし、実際の基礎控除は4,200万円。

物価を考慮すると、その差はさらに大きく感じます。

※物価の比較は1996年の暦年平均と2025年度平均を使用した概算です。相続税の控除額は物価に連動する制度ではありません。

1億円を相続したら、30年前と今で税金はいくら違う?

では、実際の税負担はどれくらい変わったのでしょうか。

次の条件で比較してみます。

計算の前提

  • 相続財産の正味の総額は1億円
  • 配偶者はおらず、法定相続人は成人した子ども2人
  • 子ども2人が半分ずつ相続する
  • 債務や葬式費用などは差し引いた後の金額
  • 小規模宅地等の特例や個別の税額控除などは適用しない
  • 1996年と2026年、それぞれの税率・基礎控除を使用する

この条件で計算すると、次のようになります。

項目 1996年 2026年
相続財産 1億円 1億円
基礎控除 7,000万円 4,200万円
課税遺産総額 3,000万円 5,800万円
相続税の合計 300万円 770万円
財産に対する税負担率 3.0% 7.7%

同じ1億円の財産を相続しても、税額は300万円から770万円へ。

470万円も増えています。約2.6倍です。

これはなかなか大きな違いではないでしょうか。

ただし、同じ名目額の1億円を比較したものであり、物価上昇分を考慮して財産の価値をそろえた比較ではありません。

また、1996年の最高税率は70%で、現在の55%より高く設定されていました。したがって、すべての財産額で現在のほうが税負担が重いわけではありません。

今回の例では、基礎控除の縮小による影響が大きく出ています。

相続税を払う人も増えている

実際に、相続税を負担する人の割合も増えています。

財務省の資料によると、2024年に亡くなった人のうち、相続税の課税対象となった人の割合は10.4%でした。

およそ10人に1人です。

以前は相続税というと、一部の資産家が払う税金というイメージが強かったと思います。

しかし、2015年の基礎控除引き下げ以降、相続税の課税対象は広がりました。

もちろん、現在でも約9割の人は課税対象になっていません。

それでも、以前より身近な税金になってきたことは確かです。

親が残した家や土地にも相続税がかかる?

もう一つ気になるのが不動産です。

相続する財産は、預貯金だけではありません。

自宅や土地、株式なども相続税の計算に含まれます。

例えば、親が長年住んでいた自宅を相続する場合。

土地の評価額が高ければ、現金をそれほど相続していなくても、相続税が発生する可能性があります。

税金は原則として現金で納める必要があるため、納税資金を用意できないことも考えられます。

ただし、自宅の土地については「小規模宅地等の特例」があり、一定の条件を満たす場合は土地の評価額を最大80%減額できます。

また、配偶者には大きな税額軽減制度もあります。

そのため、家を相続したからといって、必ず多額の相続税が発生するわけではありません。

重要なのは、財産の評価額だけでなく、家族構成や利用できる特例も確認することです。

そもそも相続税はなぜ必要なのか?

ここまで相続税の負担について書いてきましたが、相続税にも目的があります。

代表的なのは、資産格差の固定化を抑えることです。

親が多額の財産を持っている家庭と、そうでない家庭では、子どもが受け継げる財産に大きな差があります。

相続税は、そうした富の集中を緩和する役割を持っています。

この考え方には一定の合理性があると思います。

一方で、親が働いて所得税などを払い、コツコツ貯めてきた財産を子どもに残すとき、さらに相続税がかかることに違和感を覚える人もいるでしょう。

法律上、所得税と相続税は課税対象が異なるため、単純に二重課税とはいえません。

それでも、税負担のあり方について議論する余地はあると思います。

まとめ:最高税率55%よりも気になること

今回、約30年前と現在の相続税を比較してみて、個人的に一番気になったのは最高税率55%という数字ではありませんでした。

それよりも、物価が上がっている一方で、相続税の基礎控除が30年前より40%も少なくなっていることです。

2015年に基礎控除を引き下げた背景には、地価下落や資産格差の是正という政策上の理由がありました。

ただ、経済状況はその後も変わっています。

近年は物価が上がり、地域によっては不動産価格も大きく上昇しています。

それなのに、基礎控除は2015年のまま。

もちろん、相続税をなくせばいいという単純な話ではありません。資産格差をどう考えるかという問題もあります。

ただ、物価や不動産価格が変化するなかで、相続税の基礎控除が今の水準で適切なのかは、もう少し議論されてもいい気がします。

親が一生懸命働いて残してくれた財産を、次の世代にどう引き継いでいくのか。

有名人の相続税のニュースをきっかけに、そんなことを考えてみました


 

GMOのサイバー攻撃が怖すぎる!自分のPCやスマホの個人情報、本当に大丈夫?

2026年10月、GMOインターネットが提供する「お名前.com デスクトップクラウド」がサイバー攻撃を受けました。

FX口座で身に覚えのない取引が行われ、顧客情報が外部に持ち出されるという深刻な事態に発展しています。

さらに、攻撃者は当初約80億円という巨額の金銭を要求。その後、約1億6,000万円を要求し、応じなければ顧客情報の公開やランサムウェア攻撃を行うと脅迫しました。

実際に、攻撃者とみられる人物が顧客の個人情報と称するデータを公開したことも報じられています。

このニュースを見て、ちょっと怖くなりました。

というのも、今回の事件は決してFXを利用している人だけの問題ではないと思うからです。

私たちが普段使っているAppleのiCloudやGoogleドライブにも、考え方として共通するリスクがあります。

便利だからと何気なく使っているクラウドサービス。でも、自分のPCやスマホにある個人情報が、どこまで外部からアクセスできる状態になっているのか、意識したことはあるでしょうか。

GMOのサイバー攻撃で何が起きたのか?

今回被害を受けたのは、GMOインターネットが提供する「お名前.com デスクトップクラウド」です。

2026年10月20日、一部の顧客のサーバー環境に不正なプログラムが設置されていたことが判明しました。

GMOの公式発表などによると、主に次のような事態が発生しています。

  • クラウド環境への第三者による不正アクセス
  • 顧客情報の外部への持ち出し
  • FXなどの取引口座での不正操作の報告
  • 影響を受けた可能性のあるサーバーは26,739件
  • 攻撃者による巨額の金銭要求
  • 顧客情報の公開やランサムウェア攻撃の予告

26,739件という数字は、あくまで影響を受けた可能性のあるサーバー数です。実際に侵入されたサーバー数や被害者数ではありません。

当初は約80億円、その後は約1億6,000万円を要求

今回の事件で驚いたのが、攻撃者の要求金額です。

GMOの発表によると、攻撃者は10月21日午後5時を期限として、5,000万ドル(約80億円)を要求していました。

その後、攻撃者とみられる人物は要求額を100万ドル(約1億6,000万円)とし、10月27日正午までに支払わなければ、顧客情報の公開やランサムウェア攻撃を行うと予告しました。

ランサムウェアとは、PCやサーバーのデータを暗号化し、元に戻すことなどと引き換えに金銭を要求する不正プログラムです。

GMOはこれらの要求には応じない方針を表明しています。

要求に応じたとしても、盗まれた情報が削除されたり、不正利用が止まったりする保証はないからです。

また、GMOはサービスを停止し、不正取引による損失の補償や利用者への見舞金5,000円の支払いを発表しています。

ここで気になるのが、なぜクラウドサービスへの攻撃がFX口座の被害につながったのか、という点です。

「お名前.com デスクトップクラウド」って何?

簡単にいうと、インターネット経由で離れた場所にあるWindowsを操作できるサービスです。

例えば、自宅のパソコンからGMOのクラウド上にあるWindowsに接続し、そこでアプリケーションを動かすことができます。

主な用途の一つが、FXの自動売買です。

自宅のPCを24時間起動しておかなくても、クラウド上のWindowsで売買プログラムを動かし続けられるわけです。

仕組みとしては、昔からあるリモートデスクトップという技術を利用しています。

私も長くシステム開発に携わってきましたが、リモートデスクトップは昔からおなじみの技術です。

離れた場所のPCを自分の目の前にあるように操作できるので、システムの保守や運用でもよく使われます。

便利な技術ですが、使い方や設定によっては思わぬリスクもあります。

自分のPCのファイルがリモート側から見えてしまう?

Windowsのリモートデスクトップには「ドライブリダイレクト」という機能があります。

これは、手元のPCにあるドライブを、接続先のWindowsから利用できるようにする機能です。

例えば、自宅のPCからクラウド上のWindowsに接続しているとします。

ドライブリダイレクトが有効になっている場合、クラウド側から自宅PCのファイルを参照できることがあります。

つまり、クラウド上で作業しながら、自宅のPCにあるファイルを開いたりコピーしたりできるわけです。

普段の作業では便利な機能です。

でも、もし接続先のクラウド環境が攻撃者に乗っ取られていたらどうでしょう。

接続中に共有されているローカルPCのファイルまで、攻撃者に読み取られる可能性があります。

もちろん、ドライブリダイレクトを有効にしただけで、すべてのファイルが自動的にクラウドへアップロードされるわけではありません。

また、今回のGMOの事件で、この機能が実際に悪用されたと確認されたわけでもありません。

それでも、普段は便利だと思って使っている機能が、攻撃を受けたときには別のリスクになるという点は気になります。

今回、ローカルPCまで乗っ取られたのか?

ここは事実と推測を分けて考える必要があります。

GMOは、クラウド環境への不正アクセスと顧客情報の外部への持ち出しを確認しています。

また、FX口座のログイン情報などが第三者に取得され、不正利用された可能性も公表しています。

一方で、利用者の自宅PCまで侵入されたのか、どのような経路で情報が持ち出されたのかについては、調査が続いています。

10月27日の公式発表では、解析が終了した顧客端末からマルウェアは確認されていないとされています。ただし、すべての端末の安全が確認されたわけではありません。

クラウド上に保存されていた情報が流出したのか。

リモートデスクトップの共有機能を通じて、ローカルPCの情報までアクセスされたのか。

あるいは別の方法だったのか。

今後の調査結果が気になるところです。

考えてみれば、AppleのiCloudやGoogleドライブも怖い

ここで思い浮かんだのが、AppleのiCloudやGoogleドライブです。

もちろん、今回のGMOのサービスとは仕組みが違います。

リモートデスクトップは離れたPCを操作する技術で、iCloudやGoogleドライブは主にデータの保存や同期を行うサービスです。

ただ、便利さの裏側にあるリスクという意味では、共通する部分があります。

例えば、iCloudには写真やファイルを複数の端末で同期する機能があります。

Googleにも、GoogleドライブやGoogleフォトなど、PCやスマホのデータをクラウドに保存・同期するサービスがあります。

一度設定してしまえば、あとは自動的に同期されるので本当に便利です。

スマホで撮った写真をPCで見たり、PCで作成した資料を外出先で開いたりできます。

でも、ふと思いました。

もしAppleやGoogleが大規模なサイバー攻撃を受けて、クラウドに保存された写真や個人情報が大量に流出したら?

家族の写真、仕事の資料、プライベートな文書……。

想像するだけでゾッとします。

もちろん、AppleやGoogleが今回のGMOと同じ被害を受けたという話ではありません。

クラウドサービスにはそれぞれ異なるセキュリティ対策があり、同期しているからといって誰でも情報を見られるわけでもありません。

ただ、自分のPCやスマホだけに保存しているつもりのデータが、実はクラウドにも保存されているということは十分にあります。

そのことを意識せずに使っている人も多いのではないでしょうか。

便利さを優先するあまり、セキュリティを後回しにしていないか?

システム開発の世界では、便利さとセキュリティのバランスは昔から難しい問題です。

利用者にとって便利な機能でも、アクセスできる範囲が広がれば、それだけ守るべき対象も増えます。

リモートデスクトップのドライブ共有もそうですし、クラウドの自動同期もそうです。

どちらも悪い機能ではありません。

むしろ、非常に便利で、今では欠かせないものになっています。

問題は、利用者がその仕組みをどこまで理解しているかということだと思います。

特に最近は、サービスを使い始めるときに案内に従って設定するだけで、さまざまな同期や連携が有効になります。

便利だから、そのまま使い続けてしまう。

でも、何が同期されているのか、どの端末からアクセスできるのか、意外と確認していないものです。

今すぐ確認しておきたいクラウドの設定

今回の事件をきっかけに、私も普段使っているサービスの設定を見直してみようと思います。

特に確認したいのは次の5つです。

  1. iCloudやGoogleドライブで何が同期されているか
    写真、文書、デスクトップなど、意図しないデータが保存されていないか確認する。
  2. 不要な同期機能が有効になっていないか
    必要のないフォルダーまで同期している場合は設定を見直す。
  3. 二段階認証・多要素認証が有効になっているか
    パスワードだけに頼らないようにする。
  4. 知らない端末がアカウントにログインしていないか
    Apple AccountやGoogleアカウントの接続端末を確認する。
  5. 重要なデータのバックアップがあるか
    クラウドだけに依存せず、別の場所にもバックアップを保存する。

なお、同期を無効にしただけでは、すでにクラウドへ保存されたデータが削除されるとは限りません。削除する場合も、同期によって他の端末のデータまで消えないか確認が必要です。

まとめ:便利なクラウド、本当にどこまで信用していいんだろう?

今回のGMOのサイバー攻撃では、クラウド環境への侵入が、利用者の金融取引にまで影響する事態となりました。

攻撃者は当初約80億円、その後約1億6,000万円を要求し、顧客情報の公開やランサムウェア攻撃まで予告しました。

まだ被害の全容は明らかになっていません。

ただ、今回のニュースを見て、改めてクラウドサービスの便利さと怖さを考えさせられました。

昔は、自分のPCの中に保存しておけば、自分で管理しているという感覚がありました。

今は、PCやスマホのデータが、知らないうちに複数のサービスや端末と同期されていることもあります。

便利になったのは間違いありません。

でも、その便利さに慣れすぎて、自分の情報が外部からどこまでアクセス可能なのか、気にしなくなっている気もします。

そういえば、iCloudやGoogleドライブの同期設定って、最初に設定したまま使っていませんか?

私もこの機会に、一度ちゃんと確認してみようと思います。


参考情報

※この記事は2026年10月27日時点の公表情報に基づいています。攻撃手法や被害範囲には未解明の部分があり、今後の調査によって内容が変わる可能性があります。

【IT業界】銀行員が3か月でシステム開発者に? みずほFGのAI人材育成から考える、これからのSEの仕事

銀行員が、たった3か月の研修でシステム開発者になれる。

そんなニュースを見て、ちょっと驚きました。

みずほフィナンシャルグループ(FG)が、営業や事務を担当してきた社員を、AIを活用したアプリケーション開発人材へ育成する取り組みを本格的に始めたそうです。

長年システム開発の仕事に携わってきた身としては、これはなかなか大きな変化だと感じています。

ただ、気になることもあります。

AIを使ってプログラムが作れることと、安全で安定して動くシステムを作れることは、果たして同じなのでしょうか?

今回は、みずほFGの公式発表をもとに、AIによってシステム開発の仕事がどう変わっていくのかを考えてみたいと思います。

みずほFGが始めた「3か月で開発人材を育てる」取り組み

2026年10月15日、みずほFGは「みずほAI Bootcamp」という人材育成プログラムの本格運用を発表しました。

これは、プログラミング経験のない社員でも、AIを活用してアプリケーションを開発できるようにする取り組みです。

従来、未経験者が開発人材として活躍するには、一般的に1年半程度の育成期間が必要とされていました。

それをAIの活用によって、わずか3か月に短縮するというのです。

研修の内容は次のようになっています。

  • 最初の1か月:AIを活用した開発手法を集中的に学習
  • 次の2か月:実際の開発案件に参加して実務を経験

2026年6月から8月に実施した試行プログラムには5人が参加し、そのうち4人はプログラミング未経験者でした。

それでも5人全員が所定の合格基準に達し、9月からエンジニア職へ転換したそうです。

11月からは参加者を20人程度に増やし、まずは100人規模の育成を目指すとのこと。

報道では、今後10年以内に数千人規模への拡大を目指すとも伝えられています。

まだ少人数での成果とはいえ、なかなか興味深い取り組みです。

AIが変えるシステム開発の常識

これまでのシステム開発では、業務担当者とシステム開発者の役割が分かれているのが一般的でした。

例えば、銀行で新しい業務システムを作る場合、こんな流れになります。

  1. 銀行の業務担当者が要望をまとめる
  2. SEが要件を整理してシステムを設計する
  3. プログラマーがプログラムを作成する
  4. テストを実施して問題がないか確認する
  5. 完成したシステムを業務で利用する

もちろん、実際の開発はもっと複雑ですが、おおまかにはこんな感じです。

ところが、生成AIの登場で、この役割分担が変わり始めています。

例えば、業務担当者がAIに「このExcelの集計作業を自動化するシステムを作って」と指示すれば、AIがプログラムを生成してくれます。

これまでプログラミングの知識がなければ難しかったことが、自然な言葉で指示するだけで実現できるようになってきました。

しかも、みずほFGの研修では、実際にCodexやClaude CodeといったAIコーディング支援ツールが使われています。

つまり、業務をよく知っている人が、AIの力を借りて自分でシステムを作る時代が始まっているわけです。

実は、業務を知っている人のほうが強い?

システム開発の仕事をしていると、よく感じることがあります。

それは、プログラミングの技術以上に、業務を理解することが難しいということです。

SEは、顧客から要望を聞いてシステムを設計します。

でも、顧客自身が本当に必要なものをうまく説明できないこともあります。

「こういう機能が欲しい」と言われて作ってみたものの、実際に使ってもらうと「思っていたのと違う」と言われる。

そんな経験は、システム開発の現場では珍しくありません。

その点、日々その業務を担当している人なら、仕事の流れや困っていることをよく理解しています。

AIがプログラミングを手伝ってくれるなら、業務知識を持つ人が開発に参加するメリットは大きいと思います。

みずほFGが目指しているのも、単にプログラマーを増やすことではなく、金融業務の知識とAIを使った開発技術を組み合わせることなのでしょう。

これは理にかなった考え方だと思います。

でも、プログラムが動けば完成なの?

ここで、SEとして気になる問題があります。

AIが作ったプログラムは、確かに動くことがあります。

でも、動いたからといって、そのプログラムが正しいとは限りません。

例えば、銀行のシステムで考えてみましょう。

  • 同時に多くの人が利用しても正常に動くのか
  • 処理の途中でエラーが起きたらどうなるのか
  • 顧客の個人情報が漏れる危険はないのか
  • 不正な操作や攻撃への対策は十分なのか
  • 将来の制度変更や機能追加に対応できるのか

こうした問題まで考えなければ、安心して使えるシステムにはなりません。

特に銀行のように、お金や個人情報を扱うシステムでは、小さな不具合が大きな問題につながる可能性があります。

AIが生成したコードを、そのまま信用するわけにはいかないのです。

実際、みずほFGの公式発表でも、AIが生成したコードについて、業務要件や品質、セキュリティを確認したうえで利用すると説明しています。

この点は非常に重要だと思います。

AIが間違えたら、誰が責任を持つのか?

もう一つ気になるのが、システムの品質と責任の問題です。

これまでのシステム開発では、設計やテスト、レビューなどを通じて、品質を確保する仕組みを作ってきました。

もちろん、それでも不具合は発生します。

では、AIがプログラムの大部分を作るようになったら、どうなるのでしょうか。

AIが作ったコードの内容を、人間が十分に理解できていなくても、システムが動いてしまうことがあります。

問題が起きたときに、原因を調査して修正できるのでしょうか。

「AIが作ったので分かりません」では済まされません。

AIそのものが責任を取ってくれるわけではないからです。

最終的には、そのシステムを開発・提供・運用する組織や担当者が、役割に応じた責任を負うことになります。

だからこそ、AIを使うほど、品質管理やセキュリティ、システム全体を理解する能力が重要になるのではないかと思います。

これからSEの仕事はなくなるのか?

今回のニュースを見て、やはり考えてしまうのがSEの将来です。

私自身、MS-DOSからWindowsへと移り変わる時代から、さまざまなシステム開発に携わってきました。

これまでも開発ツールやプログラミング言語は大きく進化してきました。

ただ、今回の生成AIによる変化は、これまでとは少し違う気がしています。

なぜなら、AIは単にプログラミングを便利にするだけでなく、プログラムを作るという仕事そのものを代わりに行えるようになってきたからです。

これまで専門的な知識が必要だった仕事を、専門家以外の人ができるようになる。

そうなれば、従来のSEやプログラマーの仕事が変わっていくのは避けられないでしょう。

特に、仕様書に従ってコードを書くことが中心の仕事は、AIに置き換わる部分が増えていくかもしれません。

一方で、業務全体を理解し、システムの構成や安全性を考え、品質を確認する仕事は、今後も重要だと思います。

ただし、そうした仕事までAIができるようになる可能性もあります。

だから「SEの仕事は絶対になくならない」と楽観的に考えることもできません。

今はまさに、SEという仕事の役割そのものが変わろうとしている時期なのかもしれません。

まとめ:AI時代に本当に必要なスキルとは?

みずほFGの取り組みは、単なる社員の学び直しという話ではないと思います。

これまでシステムを「作ってもらう側」だった人が、AIを使って「自分で作る側」に回る。

これは、システム開発のあり方を大きく変える可能性があります。

業務を理解している人が、自分のアイデアをすぐに形にできるのは素晴らしいことです。

その一方で、品質やセキュリティ、運用まで考えたシステム開発が必要なことも変わりません。

これからは、プログラミング言語をいくつ知っているかよりも、何を作るべきかを考え、AIが作ったものを正しく評価できる力が重要になるのかもしれません。

とはいえ、その評価すらAIが担うようになったら、SEの役割はさらに変わっていくでしょう。

長くこの仕事をしてきた身としては、AIの進化にはワクワクする反面、少し不安も感じています。

10年後のシステム開発の現場では、人間はいったいどんな仕事をしているんでしょうね。


参考資料

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